ランドナーというスポーツバイクはご存知でしょうか。
日本では、1970年代から1980年代前半に「サイクリングブーム」が後押しとなり、大手自転車メーカーからも様々なランドナーが発売されました。ランドナーは、フランス発祥のツーリング自転車です。
フランス語の小旅行「ランドネ」に由来すると言われています。「あれ?グラベルロードと似ている」と思った方も多いのではないでしょうか。
日本で人気を呼んでいるグラベルロードの遊び方の1つに自転車キャンプといった小旅行目的の使い方もあります。
ランドナーとグラベルロードでは、どんな違いがあるのか比較しながら紹介していきます。
ランドナーとグラベルロードを比較
「ランドナー」と「グラベルロード」で何が違うのか下記の項目に沿って説明していきましう。
【比較項目】
- 使用目的
- フレーム
- ハンドル
- タイヤとホイール
- 泥除け/フェンダー/ペダル
- ブレーキ
- パーツ構成
- 価格
- 重量
- 遊び方
使用目的
ランドナー(ツーリング車)
日本では日帰りから小旅行を目的として使われることが多いです。速度を求めるというよりは長くゆっくり距離を走れるように作られています。
また、ブーム時は日本一周を目的に走る方も多くいました。
1970年代後半頃からは、一般道や峠、林道だけでなく、自転車が走行困難な今でいうグラベルといった砂利道、未舗装路の山道を走行したり、山岳サイクリングとして自転車を担ぎながら走破したとされています。
そこから、より山岳コースを走りやすくするように改造したランドナーが登場しました。
グラベルロード
グラベルロードは、日常の移動手段として通勤通学から週末のサイクリングまたは距離100km以上の長い距離でも快適に走ることができる乗り物です。
また、自転車に荷物を積んで移動できるように耐久性と安定性も高くなっています。
走行できるフィールドは、舗装路だけでなく砂利道やトレイルと言った未舗装路も走行できるように想定されて作られています。
フレーム素材
ランドナー(ツーリング車)
ランドナーのフレーム素材は、クロムモリブデン鋼、古いものではマンガンモリブデン鋼が伝統的に用いられています。
クロモリと言われるもので鉄です。
鉄と聞くと重たそうに聞こえますが鉄にも種類があり、長時間の走行でも疲労の蓄積が少なく、金属疲労に強く驚くほどに振動吸収性が良好です。
また、アルミ素材よりも強度が高く、旅先でもしフレームにトラブルがあった際でも、鉄なら溶接したり加工しやすくメリットがあります。
一度、乗ったら癖になる乗り心地の良さからも愛好家が多いです。
グラベルロード
グラベルロードのフレーム素材は、アルミニウムまたはカーボン素材が多いです。
アルミニウム素材の特徴は、軽量で強固で加工しやすく、カーボン素材よりも安価という所です。
アルミ合金の種類によって、剛性や乗り心地、反応の良さが変わってきます。
カーボン素材の特徴は、軽くて硬い素材です。弾性率が高く変形しにくい炭素繊維でできています。
カーボン素材は高価なので、自転車そのものの値段が上がってしまうのと、落車した際には割れてしまい修復が難しい場合もあります。
ハンドル形状
ランドナー(ツーリング車)
ランドナーのハンドルは、長時間走っても疲れないように多彩なポジションが取れるドロップハンドルが主流です。
グラベルロードなどでも使用されるフレアハンドルと似ている、正面から見ると「ハの字」になっている「ランドナーバー」を用いられます。
フロントバックを装着した際でも、ブレーキ操作がしやすい特徴があります。
また、大きな特徴は、ブレーキワイヤーが上に伸びています。これは、フロントキャリアを取り付けても干渉して邪魔にならないようにするためです。
グラベルロード
グラベルロードのハンドル形状は、スポーツバイク特有のドロップハンドルというアーチ状タイプになっています。
ドロップハンドルの大きな特徴は、前傾姿勢になることで空気抵抗が減り長時間の走行でも疲れづらくなります。
また、ドロップハンドルで下ハン部分が横に広がっているフレアハンドルというタイプもあります。
フレアハンドルの場合、フロントに荷物を車載する際にハンドルが横に広がっていることで干渉しない形状になっています。
この前傾姿勢に慣れない人や長い距離を走らない人は、グラベルロードでもフラットハンドルにして乗る人もいます。
走行時の巡行速度の維持や安定して長い距離を走りたい人はドロップハンドルがおすすめですが、完成車の多くはドロップハンドルになっているので、お店で交換してもらうか自分で交換するしかありません。
タイヤとホイール
ランドナー(ツーリング車)
ホイールには、650A(26in×1 3/8)または 650B の規格を用いることが多い。
ランドナーは旅行用途であることから荷物積載量が比較的多いことや、日本では、舗装道路が少ない時代に発展したという時代背景から、やや径が小さく太目の車輪が採用され、初期には650×42Bが好まれた。 -wikiぺディア参照-
ホイールサイズが小さくなることで、小さくなった分、太めのタイヤが装着でき、重たい荷物を載せても低重心で安定性が高まることから小さめのリムが好まれていました。
現在はシティサイクルとの互換性のある650Aのホイールやロードバイクやクロスバイクで使われる700Cホイールが装着したランドナーが主流です。
ランドナーのタイヤ幅は32C〜44Cが主流です。今のグラベルロードと同じくらいのタイヤが装着可能です。
グラベルロード
グラベルロードのタイヤ幅は、使用しているフレームのクリアランスによって装着できるタイヤ幅に大きな差がでます。
クリアランスによって、ロードバイクのような細いタイヤ25Cからマウンテンバイク用の50Cタイヤまで装着できるフレームもあります。
ご自身がどんな場面でどんな使用をするのかによって、フィールドに合わせてタイヤ幅を選ぶことができます。
泥除け/フェンダー/ペダル
ランドナー(ツーリング車)
【泥除け】
ランドナーの特徴としては、軽量なアルミ合金製の泥除けが装備されています。
今のシティサイクルでは当たり前ですが、ロードバイク、クロスバイク、グラベルロードに標準装備されていなく後付けで購入しないといけません。
【キャリア】 フランス系ツーリング車の特徴として、フロントキャリアおよび一部リアキャリアの装備が付いています。
【ペダル】
ランドナーなどのツーリング車では、ペダルとシューズを固定させるトークリップとストラップと言われる自転車器具を装着させることが多いです。
ペダルとシューズを固定させることで、ペダリング効率が上がり、長時間走っても疲れづらくする特徴があります。
現代のスポーツバイクでは、ビンディングペダル、ビンディングシューズというスポーツバイク専用のペダルとシューズを使用します。
大きな違いはトークリップの場合、一般的なスニーカーを履いたまま着脱できるので、観光やキャンプなど歩く場面で重宝します。
現在のSPSシューズに近いですが、ご自身のスニーカーをそのまま流用できるのは追加予算が掛からず、ファッションとも合わせやすい特徴があります。
トークリップは付いているモデルもあれば、後からご自身で購入する場合もあります。
グラベルロード
グラベルロードには基本、泥除け、キャリアは付いていません。必要だと思う場合、後からご自身で購入して装着させます。
理由としては、軽量化を図りまたは空気抵抗を考えて無駄なものは付けない風習があります。
グラベルロードなら車載目的もあるからキャリアがはじめから付いていてもいいじゃないと思うかもしれませんが、世界的には軽量化のグラベルロード、エアロ形状の無駄を省いたグラベルロードの登場から必要最低限のパーツ構成になっています。
車載目的でなければキャリアは必要ないですし通勤通学と違って、多少の汚れは覚悟して悪路や雨上がりの路面を走ることを想定しているので、ご自身で必要なら購入しましょう。
ペダルはフラットペダルまたはビンディングペダル、ビンディングシューズを使用します。
観光やキャンプ目的ならフラットペダルでご自身のスニーカーでもいいですし、オンロードもオフロードも速度良く走りたい方はビンディング対応するといいでしょう。
ブレーキ
ランドナー(ツーリング車)
ランドナーに使用されるブレーキは、カンチブレーキが多いです。
カンチブレーキの特徴として、泥詰まりしにくい特性があり主にシクロクロス、ランドナーなど未舗装路に対応する自転車に用いられる事が多いです。
また、ブレーキワイヤーを外すことが容易であることから輪行やメンテナンスが容易であり、機構が単純なために故障が少ない特性があります。
また、タイヤとのクリアランスが大きいために泥や雪が詰まることが少なく、泥除けとの併用も容易です。
グラベルロード
現在のグラベルロードのブレーキの特徴は、ディスクブレーキが主流です。
ディスクブレーキの特徴は、ホイールの中心部についた金属製の円盤型のローターを専用の樹脂や金属製のブレーキパッドで挟み込んでブレーキをかける仕組みになっています。
少ない力でしっかり止まることができ、雨天時の制動力も効きやすいブレーキです。
パーツ構成
ランドナー(ツーリング車)
ランドナーのパーツ構成は、1980年代頃からランドナーの生産が減少したことがきっかけで、それらの部品メーカーは、倒産や廃業、方針転換を余儀なくされました。
現代では、ロードバイクのコンポーネント(クラリス、ティアグラグ)やMTB用に設計されたコンポーネントが用いられることが多くなっています。
また、ランドナーはフロントをトリプルギアと3枚ギアが付いているものが主流で、急勾配や荷物を載せても力強く走れるようになっています。
一方でグラベルロードはフロントシングルギアと前を小さくする代わりにリアのスプロケットを大きいものにしています。
ランドナーとは逆にフロントギアを小さくするメリットとしては、ギア操作を片方で済ませられる点とチェーン落ちしづらくなる違いがあります。
グラベルロード
コンポーネントについては、シマノ、スラム、カンパニューロの3大メーカーからグラベルロード専用設計のパーツが登場しています。
日本メーカーからは2019年にSHIMANO(シマノ)からGRX(ジーアールエックス)と呼ばれるグラベルロード専用設計のパーツが登場しています。
SHIMANO GRXはグラベルライドに最適化された操作性、ギア構成、堅牢な構造、そして静かで信頼感のあるドライブトレインによってグラベル専用コンポーネントという独自のブランド価値を構築しています。
それはロード用コンポーネントの単なる流用ではなく、ライダーをグラベルライドへ駆り立てられるものとしてゼロから設計したものです。
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グラベルロード専用コンポの特徴は、特に荒れた道でもチーェン暴れを制御できたり、荒れた道でもハンドル操作がしやすかつまたり、耐久性の高いパーツが使用されています。
フロントギアはシングルが主流となっており、リアのスプロケットを大きくします。
ロードバイクにはなかったギア比で、今まで痒いところに届かなかった細かな変速ができるように各社で工夫がされています。
価格
ランドナー(ツーリング車)
ランドナーの価格帯は、6万円〜15万前後で完成車で購入することができます。
また、オーダーで購入するとフレームが15万円〜30万円前後で自分好みのカラーやサイズで購入することができます。
スポーツバイクの中では、比較的にお買い求めやすい価格から始められます。
グラベルロード
グラベルロードの価格帯は15万円〜20万円前後でしたが、最近では世界的なグラベルバイクブームとコロナによる自転車需要の増加によりパーツの高騰が影響しています。
ロードバイクの平均的な価格帯と変わらないくらいになってきており、今では15万円〜30万円前後のモデルが多いです。
軽量モデルやエアロ形状なものなど、開発費が掛かっているグラベルロードも市場に出始めた影響も考えられます。
車体重量
ランドナー(ツーリング車)
ランドナーの重量は、12kg〜13kgくらいが多いです。フレーム素材がクロモリ(鉄)なのに、想像よりも軽いと思った方も多いのではないでしょうか。
もちろん、これに追加でキャリアを取り付けたりすれば、その分の重量は増しますが重さを気にしていた方も購入検討の候補にあがってくるのではないでしょうか。
グラベルロード
グラベルロードの重量は、使用されているフレーム素材、パーツのグレードによっても変わってきます。
特に車体に荷物を載せれるように強度と耐久性が高くなっているので、平均して重量12kg〜13kgくらいのモデルが多いですが、最近ではバイクパッキングはせずにグラベルレースや速度を競って走れる軽量モデルも多く、ロードバイクと変わらない10kg以下の重量のバイクも登場しています。
遊び方の違い
マウンテンバイク
ランドナーの遊び方は、急がずに時間をゆっくり楽しみながら自転車旅ができるところです。
また、クラシカルなデザインからも服装と合わせやすく日常使いからちょっとしたサイクリングまで楽しめます。
標準装備として泥除けが付いているのも普段使いする人にとってもポイントが高いのではないでしょうか。
また、荷物を載せることを前提に作られているので、自分好みのバックを取り付けたり、荷物を付けて走った時の安定感を感じることができます。
フレーム素材もクロモリと乗り心地も良く長く愛用できるので、一緒に思い出を作る相棒としてもオススメです。
グラベルバイク
グラベルロードの遊び方は、オンロードもライトなオフロードも楽しめるところです。
ロードバイク並みに舗装路を走ることができ、ロードバイクやクロスバイクでは走れないような砂利道やトレイルを走ることができます。
マウンテンバイクほどではないですが、ライトなオフロードを走れる魅力があります。
また、荷物が積めるよう専用のダボ穴が空いており、国内では自転車キャンプが流行り始めています。ダボ穴などはマウンテンバイクにはないグラベルロードの特徴です。
最近、海外ではグラベルレースが人気のため、ロードバイクに近いエアロ形状で軽量なグラベルロードも出始めています。
また、マウンテンバイクの機構を取り入れたサスペンション付きのグラベルロードが登場して話題になりました。
まとめ
いかがだったでしょうか!!
クロスバイク、ロードバイク、グラベルロード、マウンテンバイクと人気の車種は知っている人は多いですが、ランドナーというカテゴリーの旅自転車について、知らなかった人も多いのではないでしょうか。
競わない、急がない、速度や軽さを求めないランドナーは、もしかすると自転車の本来の愉しみ方を教えてくれる自転車なのかもしれません。